ある企業の2つの部署の話から
ある会社で、2つの部署に、同じ大規模なプロジェクトが任されました。
一人ひとりに割り当てられたタスクもとても大きく、個々の工夫や協力がなければ進めにくいものでした。
それぞれの部署に、同じように豊富なデータベースや情報共有の仕組みが整えられました。
ただし、その情報をどう活用し、どう生かすかは社員一人ひとりの工夫に任されていたのです。
部署Aでは――。
「どうすれば自分の手元に有益な情報を集められるだろうか」と、ひとりひとりが必死になっていました。
ある人は一晩中データを探し続け、ある人は同じ資料を繰り返し取り合おうとする。
運よく見つけられた人もいれば、スキルが足りずになかなか辿り着けない人もいます。
やがて苛立ちが募り始めました。
「あの人だけ成果を独占している」
「情報を見せてもらえず成果が出せない」
そうした声が飛び交い、次第に「不公平だ」「責任を押し付けられている」といさかいが始まりました。
職場の空気は重くなり、殺伐としていきました。孤立して苦しむ人も現れはじめました。
部署Bでは――。
明るい声が聞こえてきます。様子を見てみると、プロジェクトが順調に進んでいるようで満足気です。
工夫上手で効率よく情報を整理していた社員のひとりが、こう言ったのです。
「このデータ、役立ちそうですよ。共有しますね」
その一言をきっかけに仲間が次々と知恵や意見を出し合い、必要な情報を互いに提供し合いました。
「これを使えば、あなたのタスクが進むんじゃない?」
「ここは一緒にやった方が早いから、手を貸すよ」
情報が行き渡ると、どのメンバーのタスクもスムーズに進み、プロジェクト全体が大きく前に進みました。
気づけば、誰もが自分の役割を果たしながらも仲間の力に助けられ、成果を喜び合える空気が広がっていたのです。
利他の心は調和につながる
同じプロジェクト、同じ仕組み、同じ条件。
ただ、誰のために動くのかの違いです。
「自分だけのため」 or「仲間と共に」――
心の持ち方の違いで、まったく異なる結果と空気が生まれるという寓話です。
これが神道でいう「利他の心」です。
自己の利益だけでなく、他者のため、あらゆるものへの感謝と共存の心。
見返りを求めない。献身的な行い。それが、結果的に豊かで調和のとれた人生につながると考えられています。

神道「利他の心」のことを思い出せば、職場が変わり成果に繋がる
利他の心は、人生だけでなく職場環境にも大きな影響をもたらします。
調和と幸福
利他の心を育む。
そうすることで、家族や社会全体に調和が生まれ、幸福な人生へとつながります。
利己的な心からの脱却
自分の利益だけを求める心から離れる。
そうすることで、他者との隔たりがなくなります。
精神的な成長
不平不満を言わず、今あることに素直に感謝する。
他者のために行動することで人生はより豊かに潤っていきます。
根底には、お互いを思いやる温かな社会があります。
自分が得をすることばかり考えていると、不安や不満が募ります。
そして、物事は悪循環に陥ってしまうのです。
「私にできることがあれば、してあげよう」
そんな気持ちで仕事に取り組めば、その心は周囲へと広がります。次第にあなたを取り巻く環境や仕事(社会)は見違えるほど良くなっていきます。 自分のことよりも他者や周囲のことを考えて行動する。すると、自分の状況もおのずと良くなっていくものなのです。
神道が教えてくれるのは、特別なことではなく、日々の中で互いを思いやる小さな心。その積み重ねが、幸せな働き方につながっていきます。


